この記事の初稿を書いている2023年12月現在、私の家は基礎まで完成しました。
まだ家は影も形もありません。
それでも、半年打ち合わせした会社をキャンセルしたりと色々とあったので、1度・1社で家づくりを完了できた方よりは、少なくとも経験値だけは貯まっていると思っています。
そのような経験をもとに、これから家づくりを始めたい方に向けて総決算的な内容をまとめてみました。
最下段のappendixに、この記事で引用した情報源や別の記事をまとめています。
まずは全体をざざっと一読して、気になるところを深堀できるように書いてみました。
1: 注文住宅を建てる流れと期間の目安
1-1: 家を建てたいが土地がないときの第一ステップ
家を建てたいけど土地が無い! ということは土地を探して買わねばなりません。
ではいざ不動産屋に!……そういう行動をとってしまうと、失敗の確率がかなり上がってしまいます。
土地を探す目的は、あくまでも家を建てるためですよね?
不動産屋さんは土地探しのプロですが、家を建てるプロではないことがほとんどです。
良いと思って買った土地が、実は余計な手間賃がかかってしまう土地で、限りある予算が圧迫されてしまうなんていう事態に陥る可能性があります。
まず第一ステップは、その限りある予算が具体的にいくらなのか? を把握することから始めましょう!
2: 注文住宅の坪単価相場と資金計画の立て方
2-1: 注文住宅の相場の推移
2023年現在、注文住宅はとんでもない状況になっています。
2020年以前と以降ではまるで世界が変わっていて、首都圏の戸建て平均価格は1,000万値上がりしています。
税別か税込か書いてませんが、もし税別だったら、これに400万円ほどの消費税が乗っかってくるわけですね。
これは住宅面積に関するデータです。
注文住宅の住宅面積は減少の一途をたどっています。
つまり、金額は1,000万上がっているにも関わらず、面積は小さくなっているということです。
住宅用地も値上がりしています。(※全国のデータ)
↑のグラフの黄色が土地の価格で、やはり2020年から急激に上がっていますね。
それにしてもマンションがやばすぎて霞みますが……
こういった状況なので、最早1年前の坪単価は正直アテになりません。
これが2023年の注文住宅の状況です。
既に家が建ち引き渡しされている人が公開している費用を参考にすると痛い目を見るかもしれません。
私も建築費用を公開している記事がありますが、これも2025年には全く参考にならなくなっていそうです。
ぐり高原さんがこの件についてわかりやすくまとめていました。
2019年に3,080万だった家が、2023年には3,905万円……
2-2: 予算の決め方
年収の何倍とか、ペアローンがどうたらとか、そういう話はほとんど「でも家庭によるので、慎重に決めよう!」という無責任な投げっぱなしで着地をします。
このあたりの情報はインターネットで調べても、なかなか核心に迫るものはありませんので、1冊の本を紹介しておきます。
アフィリエイトリンクですが、サクッと読める本なので図書館で借りるとかでもokです。
この本の第3章に書いてある「予算はバッファーで考える」というのがとてもしっくりくる考え方です。
本の中身をそのままブログで書くわけにはいかないのですが、一応ここで重要な部分を記しておくと、予算は「毎年どれだけ貯金しているか」をベースに考えてください。
いま払っている家賃が毎月10万円、そして毎年100万円貯金できているのであれば、少なくとも220万円は破たんせずに払える金額になるわけです。
じゃあ貯金はどうするのよ?? というようなことも踏まえて、考え方がしっかり本に書かれています。
これは年収倍率では出せない上に、それぞれの家庭の事情を汲んだ予算設定が可能になります。
2-3: ローンとは別に必要になる現金
住宅を買うにあたって、頭金を払う、払わないに関わらず用意しておかなければならない現金があります。
土地 | 建物 |
---|---|
手付金:だいたい100-200万くらい 印紙代:1万円 | 契約金:5万円~数百万 印紙代:1万円 設計費:0~数百万 太陽光システム一式:0~積載量応じて |
ローン担当者に相談の上、これらはローン実行時に手元に戻ってくるように融資を受けることも可能です。
ただ、一時的に数百万円が手元から消えるため事前に必ず把握しておいてください。
太陽光システム一式に関してですが、数年前の法改正により、”利益を生み出すことが目的のもの”に住宅ローンを適用する場合はかなり面倒な手続きが必要になったそうです。
その影響で、太陽光関連機器は融資対象外とする銀行があります。
私が融資を受けた銀行は、蓄電池が無く売電が発生することが前提のパネルに関しては融資できないとのことでした。
住宅ローンを借りる銀行に事前に確認しておきましょう!
3: 注文住宅を選ぶ際のハウスメーカーと工務店の選び方
3-1: ハウスメーカーと工務店の違いとは
比較的こういう傾向がある、という意味で表を作ってみました。
ハウスメーカー | 工務店 |
---|---|
全国展開している 工期が短いことが多い ガバナンスが安定している 倒産リスクが小さい たくさんの人が関わる 施主ブログやSNSでアクセスを集めやすい | 地域密着型 建材の仕入から行うため自由度が高い 営業を挟まず最初から設計する人と話せる |
ハウスメーカーも工務店も例外が多すぎて、そもそもそういう大分類で比較することはナンセンスです。
ちなみに工務店が安いというのも全くの幻想で、ハウスメーカーと大して変わりません。
安い工務店もハウスメーカーもあれば、高い工務店もハウスメーカーもありますし、営業がいる工務店もあれば、最初から設計士と話せるハウスメーカーもあります。
なので決める軸としては純粋に、ハウスメーカーで建てたいか、工務店で建てたいか、それだけの理由で決めて問題ないと思います。
ちなみに私は工務店を選んでいますが、選んだ理由としては下記です。
- 自分が使いたい建材で家を建てたい
- ハウスメーカーの保証制度を信用していない
- 造作家具などの手仕事に憧れがあり、壊れたら買い替えるのではなく修理して長く残していきたい
- 関わる人間は少なければ少ないほどミスが少なくなると信じている
こういう記事も書いているので、良かったら読んでみてください。
3-2: ハウスメーカー選びのポイント
断熱性能を一定水準満たしていれば、あとは予算と好みで決めて良いと思います。
どれだけ勉強しても、たぶんその勉強の成果が選択の決め手になることはないです。
なぜなら、ハウスメーカーを選ぶ理由は「担当者の相性」が1位だからです。
(出典:LIFULL HOME’S)
私はBESS、タマホーム、一条工務店、住友林業、三井ホームで話を聞きました。
この中で一番最後まで悩んだのは三井ホームでした。
理由としては、まずは前提条件の耐震性能、断熱性能について求めている数値を達成していること、そして提案してくれたプランが他のハウスメーカーよりイケていたことでした。
ただ、後者はかなり属人的な理由で再現性が無いので、すべての人に三井ホームが絶対おすすめというわけではありません。
つまりは、前提条件(耐震性能、断熱性能)を満たしていれば、まずはハウスメーカーで話を聞いてから決めましょう。
ハウスメーカーへ話を聞きに行く場合の心得などをこちらの記事でまとめています。
3-3: 工務店選びのポイント
工務店選びはギャンブルです。(終わり)
と、締めるわけにはいかないので、可能な限り成功確率を上げられるような提案をまとめてみます。
まず、なぜギャンブルなのかというと、工務店は潰れるのです。工事の途中でも潰れます。
先述の記事と同じものですが、この記事で工務店の倒産状況や倒産したらどうなるかについて書いています。
潰れない工務店を見分けるのは非常に困難です。
石橋をたたいて歩きたい方に向けて、対策を強いて挙げるのであればこんな感じ。
※私はここまでチェックしてないです。
- SUUMOやLIFUL HOME’Sに載っている工務店か確認する。(=上場企業と取引できるということは、最低限の反社チェックを通り、かつ、信頼できる与信がある)
- 帝国データバンクなどで与信をチェックする。(=49点以上あればok)
- 完成保証に入れるかを確認する。(=直近の実績次第ではこの保険に入れないので踏み絵になる)
- 役所に行って建設業許可申請書の確認をする。(=面倒だけど財務状況の把握はこれが一番)
上記のうち、特に役所に行って建設業許可申請を確認する方法が一番面倒で、一番正確に工務店の状態を把握することができます。
例えば神奈川県の場合は、「神奈川県 建設業許可申請 確認」で検索すると、閲覧の申請方法がヒットしますので、そこから確認の手続きを行います。
閲覧方法
引用:神奈川県 許可申請等の閲覧
建設業許可申請書等閲覧請求書(ワード:25KB)に「住所」「氏名」「電話番号」と、ご覧になりたい業者名及び許可番号、請求理由等を記入して受付担当者にお渡しください(同請求書は窓口にもあります)。業者ファイルをお渡しします。 許可番号がわからないときは、少なくとも正確な商号、本店所在地をお調べになって、控えたうえお越しください。許可番号は建設業課内でも調べられます。印鑑は不用です。 なお、閲覧に際しては、一業者につき300円の神奈川県収入証紙が必要です。
これで、何も調べないで挑むよりは潰れる可能性が低い業者を選べるはずです。
そのあとは、ぜひ積極的にホームページから問い合わせをして、完成見学会に足を運びましょう。
これも、耐震や断熱性能が基準を満たしていれば、あとは好みで選ぶでokです、と言いたいところなのですが、私の実体験から工務店の場合はもう一つ気を付けたほうが良いことがあります。
それは、予算を守る気があるかどうか確認することです。
衝撃の事実なのですが、予算を平気で1,000万以上ぶっちぎってくるパターンがあります。
予算1,000万超えてるのに、「ちょっと高くなっちゃって~、どうっすか?」テヘヘって感じで見積もり書を出してきます。
詳しくは5章で述べますが、工務店の場合は予算内でプランを組んでくれるのか、本当に絶対に必ず確認してください。
4: 業者が決まったら土地探し
4-1: 土地を選ぶ際の注意点とは
土地探しの注意点は、自分だけで土地を探さないことです。
土地って考えることが多すぎます。
先述のこちらの記事の引用ですが、土地探しの注意点はめちゃくちゃ多いです。(興味がある方は展開してください)
土地探しで気を付けなければいけないポイント(もっとあるかも)
- 防火地域は窓と外壁のコストに影響
- 防火地域の窓は網が入るため、家の見た目、家から外の景色に影響
- 用途地域によって家の大きさ(主に高さ)に影響
- 用途地域によっては将来高層マンションに囲まれる可能性あり……
- 周辺の建物の高さは日当たりに影響
- 周辺道路は建築資材の搬入費用に影響
- セットバックで建築有効面積が減少
- 北側斜線の制限で天井高(建物の高さ)に影響
- 水道管の口径によっては更新工事で費用に影響
- 擁壁は場合によってはやり直しで数百万のコストアップの可能性
- 擁壁はやり直さない場合でも地盤改良が必要になったときに大幅コストアップの可能性
- 地域によっては緑化面積が設定されており建物の床面積に影響
- 確定測量図の有無で隣地との境界があいまいで争いが起きる
- 土地の特性によっては補助金等が受けられない可能性あり
- 接道幅によっては家を建てられない可能性あり
- 高低差がある土地は土砂運搬費用や基礎工事費用に影響
ちなみに地盤改良は運ゲーなので、気にしなくて良いです。
地盤マップとかのアプリとかも意味ないです。
私の土地は地盤マップで良好でしたが、実際は地盤改良が必要でした。
これを素人が把握してコントロールするのは不可能に近いので、必ずハウスメーカーや工務店に相談をしてください。
この土地を買おうと考えているがどうでしょうか、と聞いてみてください。
もちろん土地は早い者勝ちなので、間に確認を挟むことで買い逃しがあるかもしれませんが、買った後に擁壁の更新で数百万が追加で発生する、隣地との境界があいまいで超もめる、みたいなリスクの方を優先的に避けるべきです。
また、自分の足で土地を見に行くことも大事です。
私は毎晩毎晩、提案された土地を仕事終わりに見に行っていました。
土地を見ないとわからない評価項目が結構あるなと気づきます。
最初は全く考えていなかった、坂の有無だったり、交通量、近所の家の様子などが気になるようになってきますし、なにより”100点の土地は無い”ということがすぐに理解できるようになります。
“理想の土地は無い”ということについて腹落ちしてからが、土地探しの本番です!
4-2: 土地探しで使って良かったツール
土地探しで使っていて便利だったツールを紹介します。
これらはいずれも無料で、広告リンクではないのでご安心ください。
それぞれ全て書くと長くなってしまったので、興味があるものはカラムを開いてご覧ください。
Google Map
・右クリックで「距離を測定」することができるので結構便利。
・ストリートビューで過去の日付にさかのぼることも可能。
Yahoo! マップ
・距離を測定すると、その地点間の標高差を自動で取得する。
LIFULL HOME’S >車での移動時間から物件を探す
・目的地とそこまでのクルマでの移動時間を指定すると、その範囲が示される。
(薄いオレンジ色がその範囲で、濃いオレンジが物件です。)
水天宮前は19.15坪で9,480万、異次元だぜ……
・右上のボタンを押すと水害ハザードマップを重ねることもできる。
私はこのLIFULL HOME’Sの画面をキャプチャして、土地探しを手伝ってくれる業者に渡していました。
https://www.homes.co.jp/destination/car/map/
今昔マップ
・昔の地図と今の地図を見比べることができるサービス。
・昔は田んぼだったのなら地盤改良が必要になる確率が上がりますし、埋め立て地だと液状化のリスクが高かったり、そんなことをぼんやり確認することができます。
5: 注文住宅の設計と見積もりの取り方
5-1: 間取りやプランの希望うまく伝えるコツ
土地が決まったらいよいよプランニングが始まります。
逆に言うと、土地が決まらないと間取りを考える意味がありません。
順番としては、土地決める→駐車場決める→間取り決める、です。
この順番が逆になると、特に首都圏ではたぶん一生土地を買うことができません。
設計士や営業の方に希望を伝えるのは、言葉ではなくできるだけ振り返ることができる情報にまとめて渡した方が良いです。
私の場合はpinterestで画像を集めて設計さんへお渡ししました。
あとはこだわりたいポイントですね。
パントリー欲しいとか、書斎欲しいとか、ビルトインガレージが欲しいとか。
このタイミングだけは予算を無視して設計士に話して、そのあとに優先順位をつけて予算内に収まる形でプランニングを始めてもらうのが良いと思います。
5-2: 見積もりを取るタイミングと方法
住宅業界は、クライアントの予算を無視しても許される稀有な業界です。
見積もりを取るタイミングは、最初です。必ず最初に見積もりを取ってください。
土地購入を決めた後、実はローン実行まで1カ月程度しか時間が無い! という場合があります。
ローンの本審査には請負契約書が必要になるのでそこで焦ってサインして最後は予算オーバー、でも契約してるから坪数減らしてでもなんとか建てないと……みたいなことが往々にして発生します。
ハウスメーカー、工務店には土地の決済前にプランニングを始めるよう必ず手配をしてください。
その上で、プランが出てきた時点で必ず予算内に収まっているか確認してください!!
何よりもこれが一番大事です!
私は予算を伝えていたものの、設計施工を依頼していた工務店が一度も見積もりを取っておらず、いざ半年後に詳細設計が終わったら1,300万予算オーバーしており、最終的にそこを解約することになりました。
半年間で話したもの全て排除しても1,000万くらいオーバーしており、そもそもプランの時点で予算には収まっていなかったのです。
こうなりたくない方は、必ず一番最初に予算内に収まっているプランであるかどうかを確認してください!!
詳しい方法は下記の記事にまとめています。
6: これまでのまとめ
- 注文住宅の金額は2020年を境に爆上がり。
- 予算は年収倍率ではなく、現在の住居費+年間の貯金額で考えると良い。
- フルローンでも家は建つが、一時的に支払いが発生するため現金は必要。
- ハウスメーカーと工務店という括りで考えるには外れ値が多すぎる。
- 業者を決めるには実際に話を聞きに行ったり建物を見に行った方が早い。
- 工務店はびっくりするくらい潰れるから気を付けよう。
- 自分で土地を探すのは無理ゲー。
- 予算を守る業者が一番偉い。
そして最後に伝えたいのは、
これ以上業者選びの方法について詳しくなる必要はないので、一刻も早く動き始めましょう!!
来年の家は、たぶんもっと高いですよ!
もう家を建てた人は、気を付けたポイントや命拾いしたヒヤリハットを良かったらコメントで教えてください!
appendix
この記事内で引用したwebサイト
SUUMO – 住宅価格の高騰はいつまで続く?2023年も?SUUMO編集長に聞く今後の見通しや購入する際の注意点やポイント
不動産家材研究所 – 不動産経済 マンションデータ・ニュース
国土交通省 – 不動産価格指数(令和5年3月・令和5年第1四半期分)を公表
LIFULL HOME’S – ハウスメーカー選びの「決め手」とは?
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