ハウスメーカーか工務店か、違いを調べて決めるのは意味ないという話。

あなたは家を建てたいな~という気持ちが芽生えました。
調べてみると、どうやらハウスメーカーと工務店という業態があるらしいということがわかりました。
どう違うんだろう? どっちを選べばいいんだろう? そう思いさらに検索エンジンを働かせて出てきたものは数多のポジショントークブログ、よく考えるとみんな同じことをふわっとした感じで言うインフルエンサーたち、最終的に資料請求をさせたり優秀な営業マンを紹介する話に着地するばかりでウンザリしてきました。
そういう汚染されたインターネットの海で遭難してしまった方にとって、この記事が次の行動を決める糸口になると幸いです。

まずは結論!

  • 冴えた頭で選ぶならハウスメーカー
  • バカになった頭で選ぶなら工務店
  • でも、ネットで調べてもたぶん決まらない!

※私はバカになった頭で工務店を選びました!

目次

イントロダクション

まずハウスメーカーか工務店で迷ったときにやるべきことは、夫婦で意見をすり合わせ……でもなく、住宅展示場に行く……でもなく、優秀な営業マン紹介マンにDM……でもなく、ハウスメーカーと工務店の違いについて理解することです。

そして、違いをネットで調べても意味ないなと理解するところまでがセットです。

ハウスメーカーと工務店の違いについて細かい話をすると、戦後の住宅供給事情まで遡ってしまうのでそこは割愛して、消費者として直面することになる違いについてこの記事では述べていきます。

財務ガチャ:ハウスメーカーの圧勝

新建ハウジングという工務店の業界誌では、倒産というタグがあります。

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2023年11月9日~27日の間で、7件の倒産記事。

工務店が倒産するとどうなるか、フェーズを分けてみるとこんな感じ。

  • 契約前:特に影響なし。また業者選びから再スタートすればok
  • 契約後、着工前:申込金や着手金を払った場合は戻ってこない。諦めて業者選びから再スタート。
  • 着工後、引渡し前:これまで払った中間金は召し上げられ、手元に残るのは借金と未完成の家。
  • 引き渡し後:特になし。何事も無くて良かった!

とにかく恐ろしいのが、着工後引渡し前の倒産。
注文住宅では、だいたい総額を3回に分けて払うことが多いです。
3000万の家だとしたら、着工時に1000万、上棟時に1000万、引渡し時に1000万という具合です。
上棟までして工務店が倒産したら、支払った2000万は工務店の財産になり、施主には何も戻ってきません。しかも工務店の家づくりの仕組み上、この一番危険な状態が一番長い期間続くことになります。
どうすればいいの? というのは、やる気があればいつかどこかの記事で書きますが、基本的に倒産しない工務店を見分けるなんて、ほとんどの場合無理な話です。

事業体の大きさから考えて、工務店の財務ガチャのハズレの確率はハウスメーカーより大きいです。

ちなみに「ハウスメーカー 倒産」で調べると全国住宅保証延長というサイトが出てきてまとめてくれていました。(直近更新されてないかも?)
上記ページが削除されていました。

他にも少し調べてみると、アーバンエステート社というハウスメーカーが一昔前に派手な倒産をしたみたいですが、その後はこういった類いの大きな事件はざっとネットを見る感じでは見受けられませんでした。(あったら追記するので教えてください!)
少なくとも、ハウスメーカーは工務店よりは倒産確率は低そうですし、倒産するとしても保証制度などでなんとかなってそうです。

(アーバンエステート事件:ワンマン経営者の“暴走”の軌跡を追う

ガバナンスガチャ:ハウスメーカーの圧勝

ガバナンスとは、組織の暴走・ずさんな経営を抑える管理体制のことを言います。企業の価値を維持・向上して健全に持続的に競争力を高めていく体制が整っているか、を評価する指標です。
例えばビッグモーター社に関しては、重い目標を現場に課すことで他社よりも競争力を高めていたのだと思いますが、その結果ゴルフボールと靴下が会社の代名詞となり、ついには金融業界から三行半を突き付けられる結末を迎えました。これは健全性、持続可能性を管理する体制が整っておらず、”ガバナンスが効いていない”状態だったと言えます。

ゴルフを愛する人を侮辱した罪は大きい。

ガバナンスの観点でハウスメーカーと工務店を比較すると、これはもちろん圧倒的にハウスメーカーの大勝利でしょう。
監査部門等を構える工務店はかなり少ないはずです。有事の際に頼る顧問弁護士はいたとしても、ほとんどの意思決定は社長の剛腕か、社長への忖度によって為されていくはずです。

参考までに、ハウスメーカーのHPにはこのようなガバナンスについての取り組みを公表している会社が多いですが、工務店のHPでは今のところ見たことがありません。
公表していないだけで裏ではしっかりやっているのかもしれませんが、こういうのは公表することに意味があります。
自社のガバナンスの取り組みを言語化して公表できるだけの仕組化がされており、結果的に”ガバナンスが効いている”というわけです。

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コスト:どっこいどっこい

でもそれだけ工務店って安いんでしょう? という印象を持っている方もおられるかもですが、少なくとも私が住んでいる首都圏近郊では全くそんなことはありません

私は訳あって2社の工務店から確定の見積もりをもらっており、坪単価185万円と120万円でした。
※詳細はこちら↓

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ハウスメーカーからは、住友林業と三井ホームから見積もりをもらっていますが、どちらも坪単価130万円ほど。2回目の工務店と金額はあんまり変わりません。
つまり、安い工務店を探せばありますが、安いハウスメーカーも探せばあります。

なのでこの段の結論としては、ハウスメーカーと工務店という括りでは、コストで比較することに意味はない、ということです。

自由度:工務店の勝ち

間取りの自由度については、工務店もハウスメーカーもそんなに変わらないのかなと思います。
工務店の方が自由だなというのは、建材の話です。私はハウスメーカーは住友林業、三井ホームと話をしましたが、建材の制限は結構ありました

いわゆるレジデンスと呼ばれるような価格帯まで手を出せるのであれば、そんな制限なんて突破できるのかもしれませんが、少なくとも一般層で出せる予算では、自然素材にこだわるのであれば工務店に軍配が上がりそうです。

屋根材、外壁材もそうですが、内装材も含めてできるだけ自然素材が良いなという嗜好があれば、ハウスメーカーでそれを叶えるのは工務店よりお金がかかるかもしれません。

でも、工務店でも自然素材を使うならそれなりにコストが上がり決して安くはありませんので、その点も忘れてはいけません。

仕事の品質ガチャ:ハウスメーカーの圧勝

ハウスメーカーでも営業ガチャという言葉があります。営業によって仕事の品質が異なるからです。でも営業は変更することができます。

工務店の場合はというと、営業と相性が悪いから変更! というのは基本できません。なぜなら営業が基本的にいないから。
恐らく社長と直接話すことになると思うのですが、社長のチェンジは会社のチェンジです
そうなればもちろんこれまでの打ち合わせの引き継ぎなんて行われませんので、振り出しに戻って再スタートするわけです。

仕事の品質が悪いとどうなるかというと、どんぶり勘定でプランをして、半年後に見積もりを取ったら1300万オーバー、そしてそもそも予算に収まるようなプランはしてませんとその場で初めて言われたりします。

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恐らくハウスメーカーではこんなことは起きないのではないかなと思います。
ハウスメーカーで予算オーバーするのは、こちらからの要望で追加したものが嵩んでしまうことが原因のはずです。なので、減額調整ではどれを抜こうか……お風呂のグレードを下げる? キッチンを下げる? という話になると思います。
私が経験した工務店の減額調整は、人間はどれくらい狭い家に住めるんだろう? 24坪? いやいや22坪でもいけるのでは? という未知への探求となりました。(当時、留置所の床面積とかを調べてましたw)

建物の品質:どっこいどっこい

肝心の建物の品質はどうでしょうか。YouTubeなどで色んなハウスメーカーの施工不良の動画が上がっていますね。
工務店で建てた家の施工不良動画はあまり観ない気がします
これはデータも無く推測に過ぎませんが、年間着工棟数の母数の差もありますし、施主の遠慮もあると思います。
先ほどの営業チェンジの件と被りますが、工務店はチェンジができないので、施主としてもなるべく穏便に済ませようという気持ちになるはずですし、自分の口コミであの工務店が潰れてしまったら皆さんのお給料は……と思うとなかなか行動に移せません。

ハウスメーカーにも工務店にも素晴らしい家があり、施工不良が発生してしまった家もあります。
ここはあまり気にしなくていいかなと思います。

個人的な考え方としてですが、「人間は必ず間違えてしまう生き物なので、関わる人間はできるだけ少ない方が良いし、自分が参加しない場で起こるコミュニケーションは少ない方が良い」と思い、多数でチームを組んでプロジェクトとして進めるハウスメーカーよりは工務店の方がミスは少ないかもなとは思っています。

メルヴィン・コンウェイという人が提唱した法則の中で、下記の図があります。。
これは人を増やすことによって組織が得られる処理能力と、人を増やすことによって組織が抱えることになるコミュニケーションコストの関係を示すものです。

引用元:https://mtx2s.hatenablog.com/entry/2022/10/17/231424

人を増やすことによって処理能力は増えるものの、その増加量をいつかはコミュニケーションコストが上回ってしまうということを示しています。上回った結果、処理能力がコミュニケーションコストに食われてしまい、組織は機能しなくなります。
コミュニケーションコストとは、全員が同じ認識を取るための確認作業だったり、話を通すための根回しだったり色々あります。
住宅建築の施主側の立場においては、設計で話していたことが施工の段階でまるで変わってしまうというような、面白伝言ゲームを避けるためのコストですね。
そして発注者として考えておきたいのは、コミュニケーションコストが増大してしまった組織はうまく処理能力を発揮できないうえに、関わる人数に対して期待するパフォーマンスを下回るアウトプットに余計な人件費を払わなければならないということです。

しかし、このコミュニケーションコストが上回る交差点が住宅建築においては何名なのか、どうにも素人にはわかりませんし、逆に多数で取り組む方がカバーし合うことでミスを潰せるという考え方もあると思うので、どっちを支持するかは自分次第で良いでしょう。この辺はもはや宗派の話だと思います。

なんで工務店を選んだのか?

上のコミュニケーションコストの話もありますが、そもそも家を建てる目的が、一族の実家を作るというものだったため、あまりリセールのことは考えず、良い感じに歳を取っていく家が良いと思ってました。

となると、古くなったら取り替えていく建材よりは、凹んだ無垢床とか、傷だらけになっていく造作キッチンを愛でたいし、そしてそれらを人の手で作ってほしいし、私の手でメンテナンスをしていきたいなという思いがあったので工務店を選びました。
なので本当は大工さんが全て手刻みで作るような、芸術的な継手があちこちに施されたような家を建てたかったのですが、私の富豪レベルが足りなかったため、落としどころとしてプレカットの工務店を選びました。

私は完全に合理性を欠いた理由で工務店を選んでいます。上で調べたことや考えたことなどは全てパーです。

合理的に工務店を選ぶ理由より、合理的に工務店を選ばない理由の方が多いです。

私はこんなにさんざっぱら調べまくって、しかも工務店で一回失敗して、その上でなお工務店を選んでいます。

芸術的な継手、”四方鎌継ぎ”

まとめ

私の経験上、ネットでどれだけ調べても、どっちで建てるかは決まりません。
まずもって例外が多すぎます。コストパフォーマンスを追求する会社コンフォートを追求する会社ハウスメーカーにも工務店にもあり、業者はみんな自社のスタイルに矜持をもって、我が社が建てる家をオススメするからです。
どの会社も他より優れているし、他よりおすすめなんです。
ハウスメーカーに行ったらハウスメーカーの良さを語ってくれるし、工務店に行ったら工務店の良さを語ってくれます。
しかも、ふつうに冷静に考えたらハウスメーカーの方が良いです。
ハウスメーカーを選べば、少なくとも夜逃げのリスクは大きく低減することができます。

ネットでアレコレ調べるのに時間を使ってしまうと変な紹介ビジネスの食い物にされますし、答えも出ないのに悩んでいる振りをしている間にも家賃は払い続けるしインフレはしばらく続きそうなので、ある程度調べて「あ、これ広告ばっかりでネットで調べても答えは出ないな」となんとなく実感が湧き始めたタイミングで、スパッと調べものをやめて実際の建物を見に行く、話を聞きに行くのが良いと思います。

その時も、いざ住宅展示場に飛び込んで! というわけではありません。
※業者選定の最初の一歩についてはこちらで書いています。

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ハウスメーカーを選んだから失敗するとか、工務店を選んだから失敗するとかそういう法則は存在しないので、頭デッカチになるのではなくて、実際の建物を見に行ってください。
ハウスメーカーなら展示場(行き方には注意)、工務店ならホームページから問い合わせができるはず。

そこで実物を見れば、ハウスメーカーvs工務店、と言う例外が多すぎて答えの出ない構図ではなく、A社vsB社といったよりシャープな視点で選ぶことができるようになります。

そうするとハウスメーカー、工務店という単純比較できない括りではなく、工法の違いや標準仕様の違い、会社ごとの強味、コストのかけ方、なによりもどの会社なら自分が住んでテンション上がる建物を予算内で建てられるのかを冷静に俯瞰することができます。

ハウスメーカーが良いのか、工務店が良いのか悩んでも答えはでません。
そんなところで時間をかけてはいけません。
気になる会社の建物は自分の目で見て、それから業態単位ではなく、会社単位でしっかり検討していきましょう。
なぜなら、沼はそこからですから!

実際に動き始めたらこの記事も読んでくれると嬉しいです。

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