枯れる技術、咲く技術

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枯れた技術

枯れた技術、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

なにかしらのソフトウェアや、もしくはハードウェアの開発職に携わっているかたにおいてはおなじみの概念だと思います。

枯れた技術とは、すなわち古い技術です。

古い技術とは、誕生から時間が経っており、とても最新とは言えず使い込まれて手垢のついた技術です。

そして、誕生から時間が経っているためあらゆるバグが修正され最新ではないため安定しており使い込まれた結果ノウハウが蓄積された技術です。

人類初の月面着陸を果たしたとされるアポロ11号を制御していたコンピュータは、ファミコンよりもレベルが低いという噂を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

アポロ11号が月に降り立ったのは1969年、マイクロプロセッサが発売されたのが1971年らしいので、NASAはおそらく研究開発の噂くらいは聞いていたはずですが、それを使わずにトランジスタの組み合わせで制御システムを作っていたそうです。
(参考:Gigazine:50年以上前に人類を初めて月面へ運んだアポロ月着陸船に搭載されていたプロセッサはこんな感じ

月面と言えば、最近の個人的ヒットは『サイバーパンク:エッジランナーズ(Netflix)』

それから60年が経ち、現代のロケットの発射成功確率は95%になりました。
今ではベンチャー企業が打ち上げを成功させる時代です。

ロケットは最新技術で作られているのではなく数多くの枯れた技術で構成されるため、ここまで安く、そして確実性を担保することができるようになりました。

ロケットがいまだに最新技術で構成されていたとしたら、恐らく宇宙輸送分野はまだここまで発展していないはずです。

なんのことはない、古臭い技術の塊が宇宙に届いていると思うと、とてもロマンを感じますね。

枯れた技術の水平思考

枯れた技術の水平思考とは、ゲーム&ウォッチを開発した横井軍平氏の言葉です。

ゲーム&ウォッチを5年早く出せば、10万円の機械になったという話。

このゲーム機は、計算機という枯れた技術を水平展開してどう使うか? 大量生産で値段の下がった液晶をどう使うか? という思考の果てに生まれた製品だそうです。
ゲーム&ウォッチのために研究開発をした最新技術を使えば高くつくだろうし、不良品を生む確率も上がってしまうわけです。

住宅においても、温暖地域での高断熱住宅に関する技術が早く枯れてほしいですね。
ナミダダケ事件を乗り越えた北海道とは違い、まだ関東圏などの6地域では高断熱住宅が一般化したとは言えず、慣れている業者も多くなく、施工不良が散見されます。
枯れていない技術は高額になるし、失敗のリスクも比較的高いので、早くお金のある方々にたくさんチャレンジしてもらってノウハウを貯めて、一般化していってほしいです。

将来的には断熱等級6や7が最低基準になるという見方もあるそうなので、その時期にはきっと技術は枯れ、コストも下がってリスクも減って、施主が勉強せずとも当然のように夏も冬も快適な家を建てる業者ばかりになっていることでしょう。

これから現れる技術を覗ける場所

博報堂の生活総研ってご存じですか?

サイトがとても面白くて、思い出したときにたびたび見に行くのですが、特に”未来年表”が大好きです。

生活総研 ONLINE
未来年表 | 生活総研ONLINE 2100年までの未来予測関連の記事やレポートを整理した未来年表データベースから、未来予測を検索することができます。

西暦を選択すると、その年に起こるかもしれないテクノロジーの進化や社会的な出来事をざざっと見ることができます。
気になるキーワードで検索して、いつ頃どれくらい進化しているのか? という確認もできます。
そしてそれらの出来事については、きちんとソースとなる情報が簡単にではありますが明記されているのも良い点です。
もちろん予想なので100%当たるわけではないでしょう。
ちなみに2150年の一番最後がめちゃくちゃ不吉で笑ってしまいます。

“シャンデリア”とも呼ばれるらしい量子コンピュータ/冷却装置。(引用:PC Watch

未来年表のキーワード検索で”住宅”と調べると、2030年の予想で気温上昇により“遮熱性建材による住宅建設が必要になる”や、“国内の住宅大手がCO2オフ住宅を標準化”“住宅購入で中古を選ぶ割合が48%になる”など、なかなか興味深い未来予想が記されています。
(ちなみに、断熱等級6が最低基準になる、ということは書かれていませんでした。)

遮熱性建材。将来の住宅は断熱どころではないかも!?(引用:株式会社ナガイ

私がいまAIの次に気になっているのが核融合発電なのですが、未来年表によると2024年に小型融合炉の実用化に成功、と予想されています。
そして、エネルギー関連で言えばペロブスカイト太陽電池。これは2025年の実用化が予想されています。
太陽光自体、2030年には発電コストが原子力並みになる未来予想もありますね。

AIも、核融合発電も、ペロブスカイト太陽電池も、高断熱住宅も、遮熱性建材も、これからグッと進化して、そして広く認知され枯れなければならない技術です。

今はまだ予期せぬ失敗を重ねてバグを洗い出し、技術を幅広く浸透させる段階ではあると思いますが、この状況も恐らく数年で脱することでしょう。
そうしたコモディティ化を経て、日本の住宅事情もゆっくりとですが良くなっていくと思われます。

そうしているうちに、そもそも新築建てる人、建てられる人がいなくなりそうではありますが。

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