10年ものとか20年もののワインって美味しいから高いんですか?
ということを、お酒を飲み始めた20歳の頃に聞いたことがあります。
運が良いことに学生の私を可愛いがってくれるバーがあり、そこのバーテンダーさんに聞いた話。
バーテンダーさんの答えは、「別に美味しくない」でした。
美味しいから高いわけではなく、貴重だから高いという話でした。
バーテンダーさんはさらに続けます。
「でも、10年前、20年前、そのワインが生まれた年のことを思い出しながら飲むから楽しいし、美味しいのかもしれない」
時間が経つということ
私はこれまでの人生で3つの財布を持ちました。
1つめは、中学生になったときにスーパーのワゴンセールで親が買ってくれた二つ折りの人工皮革の財布。
13歳のときに買ったその財布を、大学を卒業するまで使っていました。
その頃には、ほつれ、やぶれ、かぶれ、さすがに社会人になってからも使うわけにはいかないということで、イルビゾンテの革財布を買いました。それが2つめの財布です。
2つめの財布の寿命は短かったです。なんと、社会人一年目の冬、酔っ払い過ぎて財布を紛失……
その後、一時的に1つめの財布を使いながら、次の財布を検討することになります。
私はもともと、できるだけロゴが見えないものを使いたいという謎のこだわりがありました。
イルビゾンテの財布も、ロゴは入っていますが目立たないし、他に良いものないし、これで良いか……と言う気持ちで選んでいました。
同じようにロゴが入っておらず、かつ耐久性がある商品を探していたのですが、なかなか見つからない。
ネットで調べてみても比較サイトやランキングサイトでは同じメーカーのものを同じような文言で紹介しているサイトばかりで、あまり役には立ちませんでした。
このまま人工皮革のワゴンセール財布を使って一生を終えるのだろうか……と思いながら、粘り強く理想の財布を探していると、ついに横浜駅で出会うことができました。
相鉄線側に売り場を構える日本のレザー製品メーカー「sot(ソット)」です。
店でひときわの存在感を放っている和紙のような模様が入った革は”プエブロレザー”と呼ばれる種類の革のようで、質感がとにかく良い感じです。
イタリアでなめした革を日本で縫製し、小銭入れのような摩擦が生まれる面には甲州織の裏地を当てています。
ロゴも見えないし、聞けば耐久性も高いということで、すべての条件を満たしていたため、その場でその財布を購入しました。
私が買ったのはプエブロレザー長財布。(公式サイトから画像を引用しています。)
革製品の醍醐味と言うと、それは経年変化でしょう。
経年変化については、下記が公式サイトの売り文句。
プエブロレザーは、革の表面を手作業で荒々しく毛羽立たせた、非常に個性的な革です。
最初の状態は和紙のような手触りで、マットな質感ゆえに光沢はほとんどありません。しかし年月の経過とともに牛革の中の油分が表面に出ることにより、綺麗な経年変化(エイジング)を実現します。
またその経年変化を特別なメンテナンスをせずに体感できるのも非常に嬉しいポイントです。イタリアンレザー最大の魅力である経年変化を感じたい方に広く支持される、とても人気のシリーズです。
https://sot-web.com/c/all/wallet/so-w-0058
そして実際の経年変化は下記。
製品は↑と同じ、プエブロレザー長財布のキャメルです。
どうでしょうか。
これは文句なしの見事な経年変化と言って良いのではないでしょうか。
特にこれと言った手入れらしい手入れはしていません。
あぶらを塗ったこともないですし、たまに雨で濡らしてしまったときに乾拭きする程度。
それでこんなに綺麗な艶が出ています。買ったときの毛羽だった、和紙のような感触も好きでしたが、やはり自分が使い込んでいくことで、綺麗に年を取っていく様子はたまりませんね。
甲州織の裏地は全く擦り切れるような様子もなく、お店の人が言っていた通り耐久性に優れています。
経年変化したものというのは、高く売れるものではないですが、なんだかとっても愛着がわきますよね。
時間が作りだした価値というものは、何ものにも代えがたい気がします。
sot(ソット)の製品では鞄も気になっているのですが、私の働き方が在宅勤務になってしまったため、出番が少なくなることが見えたためまだ買っておらず……
しかしいつか、息子に引き継ぐような製品をまたsotで買いたいと思っています。
良い感じに老いていきたい
私の実家には、家を建てたときに甕(かめ)に仕込んだ泡盛があります。
最初に封を開けたのは、長男(兄)の成人式の日でした。
私はそのとき未成年だったので飲めませんでしたが、兄と父が全然美味しくない! と笑いながらその泡盛を掬って飲んでいたのを覚えています。
本当に美味しくなさそうでしたが、それでも父は、特別なものを飲んでいるような顔をしていました。
恐らく家を建てたころの思い出や、そのとき小さかった兄のことを思い出していたのでしょう。
なによりも美味しい泡盛だったのかもしれません。(美味しくなさそうだったけど)
※ちなみに私の成人式では父がインフルエンザで飲めませんでしたw
私もなにか、時間を感じられるようなものを身に着けて、時間を感じられるようなものを大事に手入れして、その時間を振り返って笑えるような、そんな年の取り方をしていきたいものです。
そうすることできっと、20年仕込みの高くて美味しくないワインを飲んだときに、大人の余裕を醸し出せるようになるのでしょう。
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