映画それいけ!アンパンマン ばいきんまんと絵本のルルン

アンパンマンの映画がNetflixに新しくアップされていたので息子と観ました。

黙って観ている息子(2歳)の隣で、私が何度も唸り声を上げてしまいました。

アンパンマンでこれは初めての体験で、あまりにも面白かったので紹介します。

目次

物語のあらすじ

劇場版アンパンマンのいつもの流れで始まります。

いつものように楽しく遊んでいるみんなを邪魔したばいきんまんが、いつものようにアンパンマンにボコられます。

バイキン城に帰ったばいきんまんが、次こそアンパンマンに勝利するためにPDCAを回していたところ、見慣れない絵本が転がってきました。

絵本の表紙には勇ましいばいきんまんが描かれています。絵本の内容は、”大きな森”という集落が存続の危機に瀕しており、そのピンチをばいきんまんが救ってみせるという物語でした。

やがてばいきんまんは絵本に吸い込まれ、”大きな森”を救うために奮闘することに……

大きな森の危機とばいきんまんの動機

大きな森は、元々は木の実がたくさん穫れる豊かな森でしたが、近年は”吸い取るゾウ”という謎の怪物によって荒らされていました。

吸い取るゾウは木々のエネルギーを長い鼻で吸い取ってしまう怪物で、大きな森はそれによって枯れつつあり、当然木の実も採れなくなってしまいました。

ばいきんまんは大きな森に到着後、ルルンと出会います。ルルンはばいきんまんが大きな森を救う”あいとゆうきのせんし”であると歓迎します。

一方で、ばいきんまんは早々に会敵した吸い取るゾウと戦う理由もなく逃げようとするのですが、吸い取るゾウに挑発され立ち向かったところワンパンKO。

しかしレジリエンスの権化ばいきんまん、吸い取るゾウに勝利するために立ち上がります。

ばいきんまんにはアンパンマンのような膂力も無ければ、吸い取るゾウのような巨躯もありません。

ですがばいきんまんには、アンパンマン号を作りあげたジャムおじさんに匹敵するエンジニアリングがありました。

数多の失敗と敗北を通して研鑽を遂げた技術力を駆使して、”吸い取るゾウ”の討伐に動き出しました。

立ち上がったばいきんまんが目の当たりにする”自らの限界”と、絶対強者の存在。

ばいきんまんが誇る”手段を選ばない”哲学とアンパンマンが垣間見せる信念。

特撮ファン垂涎の巨大怪獣と巨大ロボのがっぷり四つ。

やがて明かされる”吸い取るゾウ”の真の姿とばいきんまんの苦渋の決断ーー

名作と呼ばれる条件

個人的な考えですが、名作映画と呼ばれる作品の多くに共通していることがあると思っています。

それは、多様な年代の鑑賞者が、その作品の中に共感できることです。

これは例えば私のような中年のおじさんが、青春って良いな〜と懐かしがるような話ではなく、その物語の中に、内省や自分の片鱗を認められるということです。

例えば名作映画という話題で必ず出てくるニュー・シネマ・パラダイス。私が初めて観たのは大学に受かって地元から遠く離れた場所に住むことが決まった時に親に勧められたタイミングでした。

あの頃の私は幼いトトに自分を重ね、視力を失ったアルフレードと駅で別れるシーンで涙しました。そのときアルフレードが言った「帰ってくるな、帰ってきてはいけない」というセリフはずっと心に刺さっています。

いまニュー・シネマ・パラダイスを観ると、きっと映画館に忍び込むトトを叱るアルフレードに、そして駅でトトを送り出すアルフレードに自分を重ねて涙を流すことでしょう。

きっと、映画アンパンマン ばいきんまんと絵本のルルンにはそれら名作映画に比肩するポテンシャルがあります。

息子は故郷が危機に晒され怯むルルンに感情移入していたかもしれません。私は不屈の精神で、そしてあくまでも燃え盛る内的な動機で強大な敵に立ち向かうばいきんまんに強い憧れを抱きました。

そして恐らく、多くの社会人が同じことをを感じるのではないかと思います。

物語としての美しさ

映画というものの美しさは、限られた時間の中で設定を立ち上げて、立ち上げた設定を使い切り、そして閉じる、ということで成り立っていると考えています。

例えば私が大好きな映画「パフューム ある人殺しの物語」のクライマックスは、”香水の付いたハンカチを振り回す”です。これだけ聞いても意味がわかりません。しかし、映画を観た鑑賞者にとっては大変巨大なカタルシスの崩壊を感じます。腰が抜けるような感覚にまで陥ります。これはこの映画がその映画の中で独自の世界観を立ち上げ、それを利用し、そして閉じたからこそ感じられる体験です。

そして映画それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルンにもそれを感じることができます。

一時間という短い尺ですが、アンパンマンというコンテキストを利用することによって、美しい映画を成り立たせることに成功しています。

ばいきんまんが担う至上命題はアンパンマンを倒すこと。罠に嵌めたり、人質を取ったり、兵站を潰したり、物量で押し込んだり、まさに手段を選ばずに目的の達成を試みます。ばいきんまんは手段を選ばない、そして手段を選ばないとはこういうことである、と設定を利用してカタルシスを作り出しています。

アンパンマンもそうです。そして作中で語られる”あいとゆうきのせんし”についても、多くの哲学的な意義をはらんでおり、観る人の想像を掻き立てる素晴らしい仕掛けになっていました。

まとめ

映画それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィもなかなか重い映画でしたが、今回Netflixで公開された映画それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルンは、私の中でアンパンマンオールタイムベストに、そして場合によってはオススメしたい映画のラインナップに入りました。

たった一時間の映画でここまで熱くなれるのは稀です。

特撮が好きな方、子どもとアンパンマンを観たい方、そしてなにかに躓いてなかなか前を見ることができない方にオススメします。

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