スーパー工務店と半年かけて打ち合わせしたものの、坪単価180万超となり予算オーバーでキャンセルをし、改めて家作りを始めています。
ちなみにキャンセルの連絡をしたスーパー工務店からは一切連絡なしです。(詳細は過去の「どうなる、注文住宅」シリーズを参照)
何社かプランをもらっていろいろと疑問に思うことがあるので記事にしています。
私が頼んだスーパー工務店は誰の家を建てようとしたのか
キャンセルした工務店のことをZ工務店として以降記載します。
(最初の前置きとして、工務店側が騙してやろうとか、予算を意図的に釣り上げてやろうとか、そういった悪意は全くなかったと思っています。ただただ色んなことが重なってしまって予算オーバーとなったのでしょうし、悪意が無いと思われる以上は、ブログ上にZ工務店の名前を書くことはありません。)
Z工務店の家作りの流れはこうでした。
最初のヒアリング→土地購入→ヒアリング→プラン申し込み→ファーストプラン提示→プラン合意&設計開始→見積もり(ここでキャンセル)
ヒアリングでは、どんな家を建てたいか? というよりは、これまでの生活や実家の話など、どちらかというと人となりを話すようなものでした。
アウトドアが好きで、庭とリビングがつながっていたりちょっとした畑をやったり、長く住みたいから老後も住みやすいようにしたい……等話しましたが、出てきたプランは2Fリビングでした。
その土地は東に小高い公園があり、西には電柱と隣家の隙間から遠くの山が見えます。
Z工務店曰くこの東西の景色を切り取ることで豊かな生活になるという話でした。
2Fに上がれば良い景色があるのに、1Fで過ごすのは悔しいでしょう? という話で、まあそれもそうかと思って飲み込みました。
1Fにあるもの:子ども部屋、主寝室、トイレ、洗面台、脱衣室、風呂
2Fにあるもの:LDK、パントリー、書斎、クローゼット
こういう構成なので、生活動線が結構複雑になります。
私が完全在宅勤務で働いているため書斎が必要なのですが、書斎はリビングにあり、かつ防音性はゼロ。
日中は家族がいて書斎は使えないため寝室で仕事をして、家族が寝る頃に書斎に上がればokということでした。(あれ、書斎いらなくない?)
Z工務店は、”オペレーションでカバーできる”、とよく話していました。
洗濯後の服を仕舞うのも、リモートワークの場所も、オペレーションでなんとでもなると。
この家は、結構カッコいい家だとは思います。
非凡な外観だし、借景をうまく利用した大開口の窓もあります。
そして性能も高い。
耐震等級はもちろん3でUA値0.36、C値もZ工務店の実績から言うと0.4は軽く切ったでしょう。
だけど、他が無いです。
暮らしやすさにまつわる工夫が無いです。
家族の日常的ないとなみに、なんらかの我慢と慣れが必要な家です。
性能と意匠は両立されていますが、使い勝手は比較的犠牲にされていました。
“暮らしやすさ”が、東西の借景と高い性能のためにいけにえにされている感覚がずっとありました。
但し私は、これまでの人生のなかで家を建てたことがないです。
だからいくつも家を建てている工務店の言うことが正しいと思っているし、慣れですよとか、気にならなくなりますよとか言われると、まあ確かに考え過ぎかと引っ込んでしまいます。実際慣れると思いますし。
結局、提案しては打ち返され、相談しては却下され、↑のプランにいろいろ書き込んでいますが、間取りはもちろん変わってないし、追加されたのは大きく言うと物干し竿と立水栓のみでした。(そして予算を1300万超えた)
それでもカッコいい家には違いない、高気密高断熱で過ごしやすいことも間違いないから納得していました。
キャンセルしてもこれ以上のプランは出ないだろうと思っていたから、実際キャンセルはかなり迷いました。
キャンセルの決定打は、こちらから頼んだわけではない天窓が減額プランでも残っていたこと。
天窓を階段室の上に設け、やわらかい光を取り込んで玄関に落とす、というZ工務店からの提案でしたが、これは削減対象にはならなかったらしいです。
私は半年かけて打ち合わせた造作家具をキッチン以外すべてイケアに変えたのに、Z工務店が憧れる建築家・堀部安嗣リスペクトの天窓は最後まで残っていました。
キャンセルした後、再びゼロから複数社とやり取りを進める中でプランをいくつかもらいましたが、生活が想像できるものばかりでした。動線が考えられていました。
「あの土地で2階リビングを作りたくなるZ工務店の気持ちはすごくわかる。だけど接道している南面道路の幅は5m以上あって1階でも日当たりは問題ないから、必ず2階リビングにしなければならないというわけではないですね」とすべての業者がそう言って、すべての業者が1Fリビングのプランを作ってくれました。
中には、東側の借景は吹き抜けの窓で切り取りますという提案もあります。
庭とのつながりや老後の生活など、こちらの要望や不安が汲まれたプランをもらって、なんと、我慢しなくてもよいのかと驚きました。
Z工務店の家は、私の家ではなくZ工務店の家だったなあと、それらのプランを見て感じています。
スーパー工務店の家は、完成見学会を開いて、こだわりの天窓と借景を切り取る窓の写真を公式snsに投稿して、voicyで語って、次の受注につなげるための素敵要素がふんだんに盛り込まれていました。
部分最適化された家のため、写真や箇条書き効果はテキメンのはずです。
我が家はHYGGE(ヒュッゲ)がテーマだったようなので、北欧チックな穏やかで情緒的なキーワードを羅列していけば、素敵な広告になっただろうなあと思います。
私が頼んだスーパー工務店はなんのために家を建てるのか
家を建てる目的は何なのか。
今回トンデモ見積もりをもらってキャンセルすることで、マイホームハイが良い具合に冷めて、その辺りを見つめ直すことができました。
家を建てる目的は様々でしょう。
トップクラスのUA値C値のため、効率的に家事がこなすため、気分の上がるデザインを求めたり、特定の建築家に惚れこんで家を建てる人もいると思います。
私はというと、自分の地元が遥か彼方にあるため、”ここで実家を作りたい”という思いで家を建てることにしました。つまり長く住みたいということが最大の目的です。
そこには豪雪地帯でも快適! みたいな抜群の性能はスコープに入っていないし、住みやすさを犠牲にしてまでの借景・意匠もスコープ外です。
だから施主の要望や生活動線よりも借景や意匠を優先する、Z工務店の家づくりとは根本の部分で私たちと噛み合っていなかったのだと思います。(予算も嚙み合ってなかった)
UA値、C値、世界基準では~、日本の家づくりは遅れていて~、という「どうせなら良いものを」という心理を突く便利なマーケティング用語があふれていますが、結局自分は何のために家を建てるのかちゃんと考えた方が良いと思います。
性能に関していえばドイツの家は世界一でどうのとよく引き合いに出されますが、ドイツでは海からの台風も少ないし、地震も日本と比較すると少ない。
国土のほとんどは北海道と同じ緯度で、ざっと調べたところ気温は年間平均で9~13℃らしいし、雨も少ないようです。そもそも環境が全然違います。※ただし、冬は北海道より暖かいそう。うらやましい。
もちろん予算が余っていてギリギリまで使わないといけない事情があるのであれば、HEAT20G3とか目指せばいいと思いますが、このインフレ情勢下で予算も決まっている中、自分が住む地域で何かを犠牲にしてまでドイツ基準の家を建てる必要があるか、冷静になって考えてみても良いかもしれないですね。
性能、性能と発信力のある団体が言っていますが、それを追い求めることで本当に住みたかった家にならない気配や、何かしら違和感があれば一度冷静になって考えた方が良いです。
まとめ
私はまんまと新住協のマーケティングに乗っかり、新住協の加盟店からスーパー工務店を探し、そして大失敗してプラン申し込み金20万円と半年を無駄にしてしまいました。
性能も意匠も、良ければ良いほど良いのでしょうが、そこを追いかけて犠牲になるものもあります。
こだわり系の工務店に注文住宅をお願いする場合、家を建てるのが目的になりがちで、そうなるとなぜ家を建てるのかを見失ってしまいます。
このプランで蔑ろにされている要素は、本当に蔑ろにして良いものなのか? を考えなくなってしまいます。
数千万円も払って誰の家を建てるのか。
これから家づくりを始める人は、そこをちゃんと考えていきましょう。
2020年以前で坪単価120万で建てられた高級めな家は、2023年には坪単価180万くらいになっています。
なにしろ、2020年以前と以降では、同じ家を建てるにしても平均で700万くらい値段が違うらしいですから。
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